統合失調症とは
統合失調症とは、さまざまな刺激を伝えあう脳をはじめとした神経系が障害される慢性の疾患です。詳細は不明な部分もあるものの、ドーパミン系やセロトニン系といった、緊張‐リラックスを司る神経系や、意欲やその持続に関連する系列、情報処理・認知に関する何らかの系列にトラブルが起きているといわれています。
世界各国で行われたさまざまな調査により、統合失調症の出現頻度は地域や文化による差があまりなく、およそ120人にひとりは、かかった体験をもっていることがわかりました。これは、統合失調症が奇病の類(たぐい)ではなく、誰しもが体験しうるような病気のひとつであるということです。
- 症状のあらわれ方① 陽性症状
- 急性期に生じる患者さんの感覚は、眠れなくなり、とくに音や気配に非常に敏感になり、周囲が不気味に変化したような気分になり、リラックスできず、頭のなかが騒がしく、やがて大きな疲労感を残します。あるいは、自分のことが周囲の人につつぬけになり、常に人から見張られていて、悪口を言われ非難中傷されているというような体験のようです。
誰も何も言っていないはずなのに、現実に「声」として悪口や命令などが聞こえてしまう「幻聴(げんちょう)」や、客観的にみると不合理であっても本人にとっては確信的で、そのために行動が左右されてしまう「妄想(もうそう)」といった症状が代表的です。
これらの症状を「陽性症状」と呼びます。陽性症状は、安心感や安全保障感を著しく損ない、一度、症状が現れるとそこからの回復過程は緩やかで、十分な時間を必要とします。
- 症状のあらわれ方② 陰性症状
- 一方、根気や集中力が続かない、意欲がわかない、喜怒哀楽がはっきりしない、横になって過ごすことが多いなどの状態として現れるものがあります。一見、元気にみえるのに、なぜか仕事や家事が続かないといわれるような状態です。
また、込み入った話をまとめてすることが苦手になったり、会話を快活に続けることに困難を感じたり、考えがまとまらなかったり、話が飛びやすくなったりして、しばしば、自分でいろいろなことを決めて生活を展開していくことが大変難しく感じられます。
これらの症状を「陰性症状」と呼びます。陰性症状は、なかなか症状として認知されづらく、怠けや努力不足とみられてしまう場合があります。
陰性症状を「症状」と理解して対応しなかった場合は、生活上のさまざまな失敗や挫折を招くことが多く、生活をしていく自信や「自分はやれている」といった自己効力感を損ないやすくなります。
- 症状のあらわれ方③ 認知機能障害
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近年、統合失調症では認知機能障害が障害の中核をなすと考えられるようになりました。ワーキングメモリ(※)、言語学習、注意を持続すること、問題解決など、これらが障害されるために、従来のリハビリテーションでは社会生活が十分回復しないと考えられています。認知機能を評価し、認知機能を改善し補うプログラムが必要とされています。
※ ワーキングメモリ(作業記憶)とは、理解、学習、推論など認知的課題の遂行中に、情報を一時的に保持し操作するための構造や過程のこと。
- 統合失調症のまとめ
- 統合失調症は、自我の機能低下を基礎に、幻覚、妄想、興奮、思考の解体などをきたす疾患です。以前は、不治の病であるかのような誤解や偏見を受けていましたが、最近では治療法が進歩し、適切な薬物療法と精神療法、社会復帰のためのリハビリテーションを行うことによって、多数の患者さんは回復して、社会復帰可能です。
- 統合失調症の自覚症状と客観的症状
- 自覚症状としては、「悪口が聞こえてくる」「近所の人が嫌がらせをする」「ずっと行動が監視されている」「何かの機械で、心身に影響を与えられている」等。
客観的にみられる症状としては、ひきこもり、不可解な言動、まとまりのない話、硬い表情、無動無言、興奮、支離滅裂等があります。